[図解] 産業用ロボットメーカー4強の比較、業界の今後について調べてみた

個別企業の研究

 

産業用ロボットの世界では、ファナック、安川電機、ABB、KUKAの4つのメーカーの規模が大きく、それらを総称して「産業用ロボットメーカー4強」と呼ばれます(海外ではrobot BIG4とかで呼ばれる)。

AIやIoT、5G通信などの技術革新や米中貿易戦争等の国際情勢の中、それぞれが現在どのような立ち位置にいるのか、今後の産業用ロボット業界はどうなるのかを調べ、わかりやすく図にしてみました。

ちなみに、自分は二年に一回東京ビックサイトで行われる国際ロボット展に足を運んだりしています。その展示では、どの企業も気合が入っていて迫力あり技術ありで面白いです。ロボットメーカーのYouTubeチャンネルに行くと過去の出展が見られるので、気になった方は必見です。

 

(本記事は、私が業界研究を目的に調べ、それをまとめたものとなります。情報ソースは確認していますが、技術的理解が浅いなどといった要因で、本記事では間違ったことを言っているかもしれません。予めご了承ください)

 

ロボットメーカーの紹介

ファナック – FANUC(日本)

山梨県富士山麓の樹海にある日本の企業。何もかもが黄色いことで有名(ロボットだけではなく、建物、社用車、スーツ、小物まで全部黄色い!)。ファナックの社員にお話しを聞く機会がありまして、気になってその「黄色いうわさ」について尋ねてみると、新しく建設される社員寮は黄色くないとの話。その理由はプライベート空間まで黄色に囲まれていると住んでいる社員の気が滅入ってしまうからだとか、なんとか。(ほんとぉ

しかし毎年とんでもない営業利益率を叩き出しており、手元資金も豊富で、最近まで日本のお金持ち企業ランキング1位に君臨していたすごいリッチ企業。

安川電機 – Yaskawa(日本)

北九州市にある日本の企業でモーター制御が強み、企業カラーはブルー。国内初の電動式産業用ロボット「MOTOMAN」を生み出し、これが安川電機のロボットブランドとなっている。安川電機はこのMOTOMANに日本刀を持たせて本物の世界的な剣豪と技を競わせる動画を作成するなど、とても遊びごごろがある企業。他にはソフトクリームロボットやおみくじロボットなどユニークなロボットを作っている。

動画↓

YASKAWA BUSHIDO PROJECT / industrial robot vs sword master

引用元動画: Yaskawa武士道ブロジェクト(産業用ロボット vs ソードマスター)

なんで英語名がYasukawaではなくてYaskawaなんだろうと疑問に思ったり。

ABB(スイス)

ABBはスイスに本社を置く巨大電機メーカー。ロボットの色は。現在(2018年12月)、日立製作所に電力事業を8000億円で売却することを計画しており、売却後はそのお金で「現在2位のロボット事業で世界首位を目指す」と公に宣言するくらいに、今後もさらなるロボット事業の強化を目指しているようだ。ソース:日本経済新聞

KUKA(ドイツ)

KUKAはドイツに本社を置くロボットメーカー。しかし、2016年に中国の美的集団に買収され、現在はその子会社となっている。ロボットカラーはオレンジ。製造業の技術革新を目指す、ドイツの国家プロジェクト「インダストリー4.0」にてオートメーション企業の一つとして、重要な役割を果たしている。

 

産業用ロボットは日本のお家芸となっていて、川崎重工業や不二越、三菱電機などは高い世界シェアを持っています。特に川崎重工業は上記の産業用ロボットメーカー四天王に近いポジションにいており調べると、むしろ現在稼働しているロボットの数では四天王最弱のKUKAに勝っているというデータもありました。


 

四大産業用ロボットメーカーの比較

(1ドル=110円、1ユーロ=130円で計算)

売上高と利益の比較 

(ソース:2017年度 企業IR資料より)

  売上高 税引前利益 利益率
ファナック 7300億円 2500億円 34.2%
安川電機 4500億円 540億円 12.0%
ABB 3兆7700億円 3550億円 9.4%
KUKA 4700億円 130億円 2.8%

世界的な重電メーカーであるABBの売上高は他を引き離して大きくリードしていることが分かります。ファナックの利益率について、東証一部上場企業の利益率の平均は7~8%程度ですので、34.2%という数字は頭がおかしいくらい優秀です

 

ロボット部門のみにおける売上高の比較

(ソース:2017年度 企業IR資料より)

  売上高
ファナック 2300億円
安川電機 1700億円
ABB 9200億円
KUKA 1600億円

数字上はABBが圧倒的ですが、ABBのロボット部門にあたる「Robotcs and Motion division」には、ロボット事業の他、発電事業やモーター事業を含んでいるので実際はさらに低い。

 

主要市場の比較

(ソース:2017年度 企業IR資料より)

地域別売上高の割合 KUKAのみ従業員数の割合

 

ファナック・・・日本19.2%、中国29.7%、中国以外のアジア15.7%、南北アメリカ19.9%、ヨーロッパ15.2%、その他0.6%

 

安川電機・・・日本32.0%、中国22.2%、中国以外のアジア13.7%、南北アメリカ18.0%、ヨーロッパ13.1%、その他0.9%

 

ABB・・・アジア&中東&アフリカ37.2%、ヨーロッパ34.5%、南北アメリカ28.3%

 

KUKA・・・ドイツ36.1%、ドイツ以外のヨーロッパ29.3%、北アメリカ19.3%、アジア&その他28.3%

 

KUKAは企業ホームページのIR資料に地域別売上高が記載されていなかったので、従業員の割合を参考値として掲載しました。

ファナックは中国市場が大きな割合を占めており、安川電機は国内市場の割合が大きいですね。またヨーロッパ市場ではABBとKUKAが強いことが分かります。

 

ロボット累計出荷台数の比較

  ロボット累計出荷台数 いつのデータか
ファナック 550,000台 2018年8月
安川電機 380,000台 2017年3月
ABB 400,000台 現在(不明)?(2018年12月確認)
KUKA 80,000台 2015年7月

出荷台数データ引用元

ファナック:https://www.fanuc.co.jp/ja/profile/advertise/2018/20180821robot55.html

安川電機:http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1808/10/news082.html

ABB:https://new.abb.com/products/robotics

KUKA:https://blog.robotiq.com/which-robot-brand-is-the-most-popular

 

BIG4でロボット累計出荷台数を比較すると、ファナックが1位、安川電機とABBで2位3位を争っていて、KUKAが4位のようです。

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[図解] 産業用ロボットメーカーの世界

以下の世界地図はそれぞれの国における最大輸入国を示したものです。この図から世界中で消費されるあらゆるモノを「世界の工場」と呼ばれる中国で製造していることが分かります。

https://www.reddit.com/r/MapPorn/comments/2f8s4q/from_where_countries_import_the_most_4500x2234_oc/

 

そのため、次世代のものづくりを支える多くの産業用ロボットが中国国内で稼働し続けており、現在、米中貿易戦争の激化の懸念がありますが、今後もロボットの売り上げが中国で大きく拡大することが予測されています。以上より、中国を中心とした産業用ロボットの業界関係図を作成してみました。

 

(図をクリックすることで拡大できます)

まず中国国内では2015年5月に国家プロジェクト「中国製造2025」を掲げ、その一つの目標として現在輸入に頼っていた産業用ロボットを自前で作ろうとする動きがあります。その中で中国政府が産業用ロボットを製造する中国メーカーに補助金を支給する仕組みを作成し、その結果ロボットを作る中国企業が増加しています。現在、技術的にはロボットメーカー4強には及ばないものの政府の支援を受けて将来的には脅威になる可能性があります。

 

以下各メーカーについて解説(引用元はこのページ最後に記載)

ファナック

ファナックは研究拠点のある日本国内にロボットの生産を集中させることで、効率化を図っています[1]。そのため、中国へ輸出されるロボットはほぼすべて日本国内で生産されています。

ファナックの売上高の地域別売り上げ割合から中国がファナックの最大の市場であることが分かります。しかし2018年11月に中国当局が輸出している一部機械製品をダンピングの疑いで調査をはじめており[2]、調査結果によっては関税を課し、中国市場での競争で不利を被る可能性があります。

 

安川電機

過去に安川電機の社長が初代中華民国臨時大総統である孫文に資金援助していた経緯から、中国との結びつきが強く、2009年に現在の中国最高指導者である習近平氏が安川電機の工場を見学し、謝意を述べるほどです[3]。そのため中国企業からは親中派の企業と認識され、それが安川電機の中国市場での強みになっているようです。

しかし2015年に中国家電大手である美的集団と提携したものの、2016年にロボット事業の強化を目的に美的集団が産業用ロボット4強のKUKAを買収しました。このため美的集団のロボット事業と安川電機のロボット事業が将来的に競合する可能性が指摘されています。(しかし、決算説明会の質疑応答にてその可能性については否定している[4])

 

ABB

日本の川崎重工と協働ロボット分野で提携を行い、今後高成長率が期待されている協働ロボット事業を強化しています[5]。また、中国に「これまでで最も先進的な」ロボット工場と研究所を開設する計画を発表していており[6]、世界で最も大きな市場である中国市場での存在感を高めています。

 

KUKA

欧州が地盤の企業ですが、2016年に中国の家電大手である美的集団に買収されました[7]。その後中国にロボット工場を建設したりと、美的集団と共に中国市場へ積極的なアプローチを図っています。

 

[図解] IoT分野における業界図

(図をクリックすることで拡大できます)

IoT技術はロボット同士やその他の機械をインターネットで繋げる技術であり、それらに搭載されたセンサーから得た情報を蓄積したりAI等を用いて分析・将来予測することにより、モノづくりの生産性を大幅に向上させる可能性を秘めています。そのため、この技術を高めることが今後の各メーカーのロボットの付加価値や魅力を高めることになります。

日本では、ファナックが世界初の工場向けIoTプラットフォームとしてFIELD systemを発表し、その後三菱電機がEdgecrossを発表し、両者で次世代工場向けIoTプラットフォームの主導権を争っていました。しかしながら2018年7月に躍進する海外勢に対抗するために両者は手を組み、両プラットフォーム間でのデータ連携を可能にしました[8]。

その他、調べてみるとこの分野におけるIBMの存在感が強いです。将来の工場IoTプラットフォーム開発ではキーマンになりそうですね。

 

次にエッジコンピューティングとクラウドコンピューティングについての面から考察します。

工場にあるロボットや工作機械を制御するには、各センサー等から取得した大量の情報を短い応答速度で処理することが求められます。ファナックや三菱電機が開発しているIoTプラットフォームでは、通信時間を削減しより短い応答速度を得るために「得た情報をその現場(機械内部)で処理」し制御を行います。これをエッジコンピューティングと呼びます。

一方、中国企業であるファーウェイは2018年4月にドイツのハノーヴァーで行われた見本市にて、次世代通信5Gを用いることで、クラウド上(機械外部)でロボットのリアルタイム制御を行うデモを行い、効率の良いクラウド制御(クラウドコンピューティング)を行えることを示し、工場のクラウド管理の可能性を示しました[9]。

そのため、5G通信が普及することで、ファナックが提唱した「世界初の工場向けIoTプラットフォーム」であるエッジ型の「FIELD system&Edgecrossコンビ」が、海外勢の後発IoTプラットフォームにシェアを取られてしまうかもしれないという懸念がありそうです

 

産業用ロボット4強の今後の展望予想

(以下素人の適当で勝手な予想です)

ファナック

ファナックの2018年度の2qにて、中国での売上高が-41.9%となったことが発表されました。この要因について、ニュースなどでは、米中貿易摩擦問題によって中国国内の工場の設備投資が減ったことが原因であると報じられています。

しかし私は中国当局の立場から考えた場合、売り上げが減ったもう一つの要因として、中国当局がファナックの存在を嫌い、ロボットを扱う中国国内の製造業に圧力をかけ始めたのではと考えます。(そのような情報ソースは存在しませんし、陰謀論チックですが)

私がそう考えた理由について説明します。その理由は、中国は国策(中国製造2025など)として国を豊かにするために「中国国内で作ったロボット」を国内で使用させようとしていますが、この国策を遂行するにあたり、日本で大半のロボットを製造し輸出するファナックはこの国策にとっては言わば邪魔な障害となってしまうからです。2018年に入って、ダンピング疑いで中国当局に捜査されていることが、中国当局がファナックを敵視しているという裏付けの一つになるのではと考えます。

以上より、ファナックは中国当局のご機嫌を取り中国でのシェアを維持するために、将来的には、今のように日本での製造にこだわらずに中国に大規模なロボット工場や工作機械工場を建設するんじゃないかなあと思います。

 

安川電機

今後も安川電機のロボットIoTプラットフォームやAI開発を関係会社の「安川情報システム」を中心に進めるのだろうかと気になります(他の企業ではCiscoやファーウェイなどの名だたる大企業が開発に携わっているがそれに対抗できるの?)。そして2018年に日本IBMとの提携を発表しましたが、それ以外に情報が少ないなと感じます。

この海外の記事[10]では安川電機のスマートファクトリーへの取り組みについて、

Yaskawa is a mystery to me, at least as far as smart factory software goes. I could not find a whole lot of information for Yaskawa. (少なくともスマートファクトリーのソフトウェアに関する限り、安川は私にとって謎な存在である。私は安川の情報をあまり見つけることができませんでした)

と評価しており、安川電機のスマートファクトリーへの取り組みは4強の中で最下位に位置付けています(ちなみに1位ファナック、2位KUKA、3位ABB)。私は安川電機は将来、自社グループだけでのソフト開発に限界を感じ、将来的に他のIT大手と手を組みそうな気がします。しかし、日本IT大手のNTTグループと富士通、NECは「FIELDsystem&Edgecrossグループ」とすでに提携しているので、それ以外なのかな?

しかし、中国との結びつきが強いという企業の特徴から、「世界の工場」中国での競争には強そうです。ただそのため、米中貿易戦争の経過しだいで大きく将来の業績が変動しそう。(これはABBとKUKAにも同じように言える)

ABB

後で追記するかも

KUKA

後で追記するかも

 

 

 

引用・出典

[1]《企業 強さの条件》ファナックの国産宣言

[2]中国当局、ファナックなど日系5社調査、工作機械、不当廉売疑い

[3]安川電機 – Wikipedia

[4]株式会社 安川電機 2017 年度 決算説明会 質疑応答(サマリー)

[5]川崎重工とABB、協働ロボット分野における協業に合意

[6]ロボットがロボットを作る工場、中国に建設へ。産業用ロボットのABB、2020年末稼働予定。

[7]KUKAを傘下に収めた中国の美的グループ、ロボット事業拡大の狙い

[8]ファナック・三菱電、IoTで握手 海外勢に対抗 

[9]5Gで海外勢が攻勢、製造現場で起こすゲームチェンジ

[10]Fanuc Leads The Way For Smart Factory Software For Now, Kuka And ABB To Follow Closely